契約トラブルは、売買契約、委任契約、請負契約、金銭消費貸借契約、賃貸借契約などあらゆる契約について発生します。
多くの場合、契約した時点ですでにトラブルの火種は発生しています。
では、どうすればトラブルを未然に防げるのか?
そこで、今回は、過去に相談のあった契約トラブルのうち、典型的な場合について、回避の仕方についてアドバイスします。
全額前払のリスク
自宅のリフォーム工事、住宅の建築などの請負契約、クラシックカーや特注品の購入(売買契約)や仲介の依頼(委任契約)など金額の大きな取引はトラブルが発生しやすい事例です。
このような契約の事例において、事業者側(売主や請負人、受任者)は、材料や品物の仕入れが必要なため、代金の前払いを要求することがあります。
手付金として代金の一部10~20%程度を支払う内容の契約であれば特に問題ないのですが、全額前払いを要求する業者は要注意です。
依頼した仕事がまだ手付かず、品物がまだ入手の目途が立っていない段階で、代金だけ全額支払うことは、非常にリスクのある行為です。
どのようなリスクかというと、受注した業者が、経営破たんするリスクです。経営破たんすると、残念ながらあなたの支払った代金はほぼ回収することは出来ません。
手元資金に余裕のある業者であれば、全額前払いをお願いせずとも、手元にある資金で、材料や商品の発注をすることが出来ます。
他方、手元資金に余裕のない業者は、自転車操業状態になっているため、全額前払いを要求することが多いのです。
「うちは全額前払いだから。他もみんなそれでやってる。これまで問題がおきたことはない。」このような業者の言葉を安易に信用してはいけません。
あなたの払った現金は、おそらく、あなたよりも先に注文した仕事の支払いや、人件費、固定費の支払い等に使われている可能性があります。仮に、あなたの後に注文者があらわれず、あなたが最後の注文者になると、あなたの契約は履行されないリスクがあります。
「全額前払いすれば、通常価格600万円のところ、今なら特別に500万円にします」こういう売り文句が業者から出た場合、非常に危険です。業者は、資金繰りに窮している可能性があります。
こういう業者と契約する場合、相手の資金力を十分に調査してから契約しましょう。調査しても分からない場合は、契約はしないようにしましょう。
あなたの取引相手がその業者でなければならないか一度冷静に考えてください。リフォーム工事や住宅の建築、クラシックカーの購入・仲介などを取扱う業者は世の中に多くあります。
他の同業者と比較して、果たして目の前の全額前払いを要求する業者が、あなたにとって唯一無二の業者なのか、それだけの信頼と実績が本当にあるのか?今一度十分に検討してから契約してください。
値段が多少高くても、他の全額前払いを要求しない業者を選んだ方が無難です。
経営破たんしそうな業者に対し、法律でどうにか払ってしまった代金の回収をできないかという相談を受けても、法律で救うことは極めて困難です。
相談を受けた弁護士の立場としても、何ら有効な解決策を提案できないことは、非常に心苦しいです。
まとめ
大きな金額の動く取引で、全額前払いは非常にリスクのある行為ですので、避けるようにしましょう。
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