みなさんは、法テラスという言葉を聞いたことがありますか?
どんなことをする場所か分かりますか?
法テラスは、正式名称を日本司法支援センターと言います。
法テラスは、法律問題に直面し、困っている人に対し、弁護士等のサービスを身近に受けられるようにする公的な機関です。
平成18年(2006年)に設立しましたので、設立から15年程度の歴史しかありません。
今回は、法テラスについて、どのような組織か詳しく解説したいと思います。
法テラスの役割・業務内容について
法テラスは、主に以下のような業務を行っています。
1 情報提供業務
法制度に関する情報と、相談機関・団体等(弁護士会、司法書士会、地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を無料で提供する業務です。
2 民事法律扶助業務
経済的に余裕のない人が、法的トラブルに直面した場合に、無料の法律相談を受けたり(法律相談援助)、弁護士や司法書士の費用の立替えを受けられます(代理援助・書類作成援助)。
個人や個人事業主が対象で、法人・組合等の団体は対象者に含まれません。
民事事件で法テラスを利用する方の多くは、主にこの業務を利用しています。
経済的に余裕のない方がサービスの対象ですので、利用するには資力要件を満たさなければなりません。
3 司法過疎対策業務
弁護士や司法書士がいない司法過疎地域に、法テラスに勤務する弁護士(スタッフ弁護士)が常駐し、法的サービスを受けられるする業務です。
4 犯罪被害者支援業務
犯罪の被害者や被害者の家族の方に対し、被害に関する刑事手続に適切に関与したり、損害や苦痛の回復・軽減を図るための法制度に関する情報提供などを行っています。
5 国選弁護等関連業務
国選弁護事件に関して、国の委託に基づき、裁判所等の求めに応じ、法テラスと契約している弁護士の中から、国選弁護人の候補を指名し、裁判所等に通知する業務等を行っています。
一般の方が、法テラスに対し、国選弁護士の選任の依頼をすることは出来ません。
一般の方が刑事事件で、弁護士に依頼する場合は、弁護士費用を払って、特定の弁護士に依頼する方法があります。これを、私選弁護と言います。
国選弁護士は、自分で弁護士を選ぶことは出来ません。
法テラスの業務について詳しく知りたい方は、下のリンクから
法テラスのホームページへ
法テラスのアクセス方法
離婚や、相続、契約トラブル等の法的な問題に直面した時、法テラスを利用する場合のアクセス方法について説明します。
1 アクセス方法は2通り
法テラスへのアクセス方法としては、①法テラス事務所に電話でアクセスする方法と、②契約弁護士の事務所にアクセスする方法の2つがあります。
2 契約弁護士とは
契約弁護士とは、法テラスとの間で契約している弁護士であり、世の中の全ての弁護士が法テラスと契約を締結しているわけではありません。
どの弁護士が契約弁護士かを知るためには、法テラスに直接問い合わせる方法、各弁護士事務所のHPに契約弁護士の記載があるか確認する方法で、調べることができます。なお契約弁護士であっても、自分のホームページで積極的に契約弁護士であることを掲載していない場合もあります。
3 無料法律相談
法テラスにアクセスする多くの場合、無料法律相談を希望する場合かと思われます。
無料法律相談は、1つの事件について最大3回まで、30分の無料法律相談を受けられるサービスです。
例えば、離婚問題で3回法律相談を受けている人が、交通事故の被害にあった場合は、離婚とは別に3回まで交通事故に関する無料法律相談を受けることが出来ます。
なお、無料法律相談を受けるには、資力要件を満たさなければなりません。
4 電話無料相談
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、現在、電話での無料法律相談を行っています。
法テラスの弁護士費用について
1 法テラスを利用するメリット
メリットその1 費用が安い
利用者側の視点から、法テラスを利用して弁護士に依頼する一番のメリットは、弁護士費用を通常よりも安く抑えることが出来ることです。
例えば、自己破産を弁護士に依頼する場合、通常の弁護士費用の相場は30万円前後ですが、法テラスを利用すると15万円程度になります。なんと相場の半額で弁護士に依頼できるのです。
メリットその2 月額5000円からの分割返済が出来る
また、弁護士費用は、通常は一括払いが原則ですが、法テラスは、分割払いが出来るのも大きなメリットです。収入に応じて毎月の返済額が異なりますが、最低5000円から返済が可能です。
2 弁護士側のデメリット
しかし、このことは、弁護士の立場からすると、同じ仕事量の事件でも、法テラスを利用した場合は、通常よりも安い費用でサービスを提供しなければならないという事を意味します。
例えば、電化製品は、品質や機能によって値段が違いますし、大量販売でコストを削減することで価格を安く提供できます。
他方、弁護士の仕事は、大量生産できるものとは異なり、一事件ごとに品質や種類が異なる一点物を制作販売するような性質の仕事ですので、コストの削減は出来ません。この点、過払い金の回収だけは例外です。
したがって、事件の性質や難易とは関係なく、一律の安価な基準で仕事を引き受けなければならない法テラスの民事法律扶助は、弁護士の立場からすると負担になっているのです。
法テラス設立当初から現在まで、弁護士側から報酬基準の改善を求める意見が出ています。
そのため、法テラスと契約しない弁護士もいますが、東京以外の地域では、およそ7割以上の弁護士が法テラスと契約をしています。
東京は、企業法務専門の弁護士も多いので、契約率が低いのかもしれません。
3 利用者目線だと
しかし、利用者側からすれば、弁護士の通常の料金の相場自体が高すぎるという感覚だと思います。
弁護士である私も、もし自分が法的トラブルに巻き込まれたら、すぐに弁護士を依頼しようとは考えません。費用が高いので。何とか自力で解決出来ないか考えてしまうと思います。
弁護士費用は、1事件あたり20万円以上が相場ですが、20万円あったら、余裕で1か月以上生活できてしまう金額ですから。
弁護士の仕事は価値として目に見えにくいものであることも一因になっているかもしれません。
スマホの普及で、あらゆる分野の情報が無料ですぐに入手できる現代社会において、弁護士と依頼者の報酬金額に対する価値観のギャップを埋めることは難しい。
4 法テラス契約の報酬に関する禁止事項
法テラスを利用して弁護士に仕事を依頼した場合、法テラスの基準で費用が算定されます。
弁護士事務所ごとに定めている報酬基準は使えません。
法テラスを利用しているのに、弁護士との間で、上乗せして弁護士費用の契約をするのは契約違反になります。場合によっては、弁護士の懲戒事由になるリスクがあります。
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