裁判所で扱っている事件の種類について 民事?刑事?

みなさんは、裁判所で扱っている事件には種類があるのはご存じですか?

テレビドラマのイメージが強い人は、裁判といえば、殺人事件の犯人や目撃者などの証人が証言台に立っている場面をイメージするかもしれません。

裁判所は、殺人事件や窃盗事件などの刑事事件以外にも様々な種類の事件を扱っています。

そこで、今回は、裁判所で扱っている事件の種類について、解説します。

目次

裁判所で扱う事件の種類

裁判所で扱う事件には、以下の種類があります。

1 民事事件

 民事事件は、当事者間の法律上の争いを扱います。

 民事事件の目的は、相手方に対し、金銭や物の引き渡し等の請求をするものです。

 ⇒交通事故等の損害賠償請求、請負代金請求、売買代金請求、慰謝料請求など個人間の争いや会社と個人の争いなど私人間の紛争全般です。

 裁判所では、裁判により解決する方法、民事調停により解決する方法、支払督促により解決する方法などがあります。また、裁判には、通常訴訟、少額訴訟、手形小切手訴訟などがあります。

 民事事件は、弁護士に依頼せずに、自分で行うことは法律的には可能ですが、現実的には難しいです。

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2 刑事事件

 刑事事件は、犯罪を犯したと疑われる人に対し、有罪か無罪か、有罪である場合にはどのような刑事罰を与えるかを判断するものです。

 刑事裁判の目的は、被告人に有罪か無罪かを決めて、有罪の場合には刑事罰を与えることです。

 ⇒詐欺、傷害、恐喝、殺人、窃盗など犯罪の種類によって、刑罰の重さが異なります。

 刑事事件の被告人は、原則として、弁護人がいなければ裁判を行うことが出来ません(刑事訴訟法289条1項)。

 これは、被告人という弱い立場に置かれた個人が、国家権力という強大な力によって、一方的に裁かれる不利益に配慮する目的です。

 自分で弁護士を依頼する経済的な余裕のない場合や、弁護士を依頼することが出来ない一定の場合は、国選弁護人がつきます(刑事訴訟法36条、37条)。

根拠条文:刑事訴訟法289条
 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
 2 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
 3 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

刑事訴訟法36条
 被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

刑事訴訟法37条
 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
 被告人が未成年者であるとき。
 被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
 被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
 被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
 その他必要と認めるとき。

3 家事事件

 家事事件とは、家庭内の紛争を扱う事件をいいます。家事事件には、離婚、相続問題、成年後見人などがあります。
 家庭内の紛争は、感情的な対立が強いことが多く、プライバシーにも配慮する必要もあることから、裁判所において、民事事件とは、区別した扱いがなされています。

 家事事件は、家庭裁判所での取り扱いとなります。

 家事事件は、裁判ではなく、主に調停・審判手続がとられます。調停と審判はプライバシーに配慮して非公開で行われます。

 裁判が出来る場合でも、いきなり裁判ではなく、まずは調停での話し合いをすることが原則になっています(調停前置主義)。

4 行政事件

 行政事件は、国や公共団体のした処分等について、処分の取り消しや変更を求めるものです。

 行政事件としては、原発の設置許可処分の取消訴訟、運転免許取消処分取消請求、情報公開請求却下処分取消訴訟、労災認定却下処分取消訴訟などがあります。

 行政事件には、行政事件手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法などの法律(これらの法律をひとくくりにして行政法といいます)が適用されます。

 あくまでも、行政事件は、行政の処分(公権力の行使)が問題になっている事案に限られます。

 例えば、市の所有する公用車に一般の人が轢かれた交通事故の事件の場合、行政の処分が問題にはなっていないので、行政事件ではありません。この場合、一般の人の間の交通事故の事件の場合と同様に、民法など私法が適用されます。

5 少年事件

 少年事件とは、20歳未満の少年の犯した犯罪(非行)に対し、刑罰ではなく、処分をするものです。

 少年法が適用されます。少年は、以下の3通りに区別されます。

  1. 犯罪少年
    ⇒罪を犯した14歳以上20歳未満の少年をいいます。(少年法3条1項1号)
  2. 触法(しょくほう)少年
    ⇒刑罰法令に触れる行為をしたが、その行為の時14歳未満であったため、法律上、罪を犯したことにならない少年をいいます。(少年法3条1項2号)
  3. ぐ犯少年
    ⇒保護者の正当な監督に従わない、犯罪性のある人と交際するなどの不良行為があり、その性格や環境からみて、将来罪を犯すおそれのある少年をいいます。(少年法3条1項3号)

 家庭裁判所で行います。

 少年事件は、原則として、裁判ではなく、少年審判を行います。審判の結果、保護観察処分や、少年院送致などの処分が行われます。殺人、強盗殺人などの一定の重大事件の場合は、逆送措置がとられ、刑事裁判になる場合もあります(少年法20条)。

少年法3条(審判に付すべき少年) 
 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
 罪を犯した少年
 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
  保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
  正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
  犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
  自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

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