協議離婚をしようとしている相談者から、「とりあえず離婚届を書いて役所に提出する予定です。養育費とかは、口頭で合意してます。他は、特に何も決めていません。どうしたらよいですか?」というような相談がたまにあります。
比較的若い夫婦の離婚に多い相談です。裁判で争うほどでもなく、子供もいるので、後々問題にならないように、きちんと決めておきたいという考えで相談にこられたのだと思います。
こういう特に親権で争っていないけれど、何を決めておくべきかよく分からないという方のために、今回は、離婚する際に決めておくべきことについて、弁護士の視点から解説します。
離婚の際に決めておくべきこと
離婚する際に、決めるべきこと、あるいは決めておいた方が良いことは、以下の通りです。
1 子供がいる場合
⑴ 親権者、監護権者
親権者の定めは、離婚するのに必須事項です(民法819条)。
根拠条文:民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
(以下略
⑵ 養育費
養育費は、必須事項ではありませんが、決めておくに越したことはないです。離婚後一番多い問題が養育費の不払いです。
支払いを確実にするためには、公正証書や、養育費の調停・審判をするのがお勧めです。
⑶ 子との面会交流
面会交流とは、子どもと離れて暮らしている父母の一方が子どもと定期的、継続的に、会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙などの方法で交流することをいいます。
面会交流権は、その法的な性質に争いがありますが、親の権利であるとともに、子の権利でもあります。
2 財産分与
財産分与は、婚姻期間が長い夫婦が問題になりやすいです。若い夫婦の離婚の場合、婚姻期間が短いことに加えて、財産がほとんどないので、あまり問題になりません。
離婚に際して、全ての財産が分与の対象になるわけではありません。
では、財産分与の対象となる財産とはどの範囲なのでしょうか?
⑴ 分与対象となる財産の範囲
財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に、夫婦が協力して得たと評価できる共有財産になります。したがって、婚姻期間が長いほど財産分与の対象となる共有財産は増加します。
離婚前に別居していた夫婦は、原則として、婚姻時から別居時までの財産が分与の対象になります。
⑵ 財産分与の対象となならない財産の範囲
結婚前から持っていた財産
夫婦の一方が、結婚前からすでに所持していた現金や不動産、株式等は、夫婦の協力して得たとはいえないので、原則、財産分与の対象になりません。
また、結婚前の貯金で買った株式が値上がりした場合の利益(果実)も原則として、財産分与の対象にはなりません。
婚姻期間中、自分の名で得た財産
自分の親が亡くなり相続した遺産や、第三者から個人的に贈与を受けた金品・物等も夫婦の協力により得たものではないので、原則分与の対象にはなりません。
このように財産分与の対象とならない財産を、特有財産(とくゆうざいさん)と言います。
根拠条文:民法762条(夫婦間における財産の帰属)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
⑶ 期間制限
離婚後に話し合って決めることも可能ですが、離婚から2年以上経つと、財産分与請求することは出来なくなります(民法768条2項)。
根拠条文:民法768条(財産分与)
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
3 慰謝料
離婚原因が夫婦の一方にある場合に、離婚原因を作った相手方に対し認められます。
実務では、財産分与の中で慰謝料分を考慮して財産分与の額を決めるというやり方もとられています。
4 婚姻費用
離婚が成立するまでの期間の生活費です。離婚調停を申し立てて離婚の協議をしている場合でも、別途、婚費費用分担請求の調停を申し立てる必要があります。
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