みなさんは、自分の車にドライブレコーダーを搭載していますか?
昨今、あおり運転が問題になる中で、ドライブレコーダーを搭載した車の数は年々増えています。
国土交通省の調査結果(「自動車用の映像記録型ドライブレコーダー装置について令和2年10月13日~10月26日実施」のアンケート)によると、令和2年時点で、約53%の自動車がドライブレコーダーを搭載しているとのことです。
ドライブレコーダーが初めて世に出たのは、2006年頃ですから、ものすごい普及スピードです。
発売当初は高額だったドライブレコーダーも、今では、アマゾン等のネット通販で、かなり安価(1万円以下)で販売されており、搭載のハードルは低くなっています。
ドライブレコーダーは、あおり運転対策だけではなく、交通事故の示談交渉の場面においても、極めて重要な役割を果たすのを知っていましたか?
今回は、交通事故におけるドライブレコーダーの役割と重要性について解説します。
ドライブレコーダーは証拠として重要
交通事故でドライブレコーダーが重要な役割を果たす場面、それは、事故の態様が争いになっている場合(過失割合)です。
センターラインオーバーの事実が問題になっている事故や、赤信号無視が問題になっている事故、制限速度オーバーの事実が問題になっている事故、歩行者の飛び出しの有無が問題になっている事故、駐車場での事故等、事故態様で当事者の言い分が食い違う場面は多いです。
こういう場合に、ドライブレコーダーで事故状況を録画していれば、真実を明らかにすることが出来ます。
もっとも、真実は、いつも自分に有利とは限りませんが。
事故態様に関し、当事者の主張が食い違い、過失割合で折り合いがつかずに裁判にまで発展するケースは少なくありません。
数十万円の修理費用等のために、わざわざ弁護士を依頼して、時間をかけて裁判するのは非常に不効率ですので、ドライブレコーダーを搭載するメリットは大きいと言えます。
ドライブレコーダーを搭載しておくだけで、無用な争いを防げる可能性が高まりますので、是非とも搭載することをお勧めします。
ちなみにドライブレコーダーは、前側だけでなく、後側も撮影するものがお勧めです。今後は、技術の進化・普及によって、全方位型のドライブレコーダーが主流になる可能性もあります。
相手方がドライブレコーダーの映像を開示しない場合
交通事故の相手の車にドライブレコーダーは搭載されている場合、その映像を開示するよう求めることは出来るのでしょうか?反対に、自分の車のドライブレコーダーの映像を相手に開示する義務はあるのでしょうか?
結論:基本的には、開示義務はない
結論としては、相手に開示する義務はありません。自分にとって不利な状況が録画されている場合、相手方に提出しないこともできます。
例外:文書提出命令
もっとも、裁判で争いになっている場合、裁判所から文書提出命令(民事訴訟法223条1項)が出されると、ドライブレコーダーの映像を提出しなければなりません。もし、裁判所の命令に従わないと、相手の言っていることが真実と認められてしまうリスクがあります(民事訴訟法224条)。
すなわち、自分に不利な映像が記録されているから開示しないという選択をしても、結局、相手の言っている事故態様が真実として扱われてしまうので、自分に不利な結論になることに変わりがないのです。
民事訴訟法223条1項(文書提出命令等)
裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
民事訴訟法224条(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
例外:令状に基づく捜索差押え
また、人身事故の場合、警察からドライブレコーダーの映像の任意開示を求められた場合、拒否することもできますが、その場合、令状に基づく捜索差押え(刑事訴訟法218条)がなされてしまう可能性が高いです。結局、強制的に映像の開示を強いられます。
刑事訴訟法218条(令状による差押え・記録命令付差押え・捜索検証)
① 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
③ (省略)
④ 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
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