【結論】
子どもを、母親の戸籍に入籍しようとする場合、家庭裁判所に対し、子の氏の変更の許可の審判申立を行う必要があります。
【解説】
賛否両論ありますが、現在の日本の法律では、夫婦別性は認められておりません(民法750条)。
そして、婚姻する場合、女性が男性の氏を称することが多いのが我が国の現状です。
離婚すると、氏を変更した者は、離婚の日から3か月以内に届け出ないかぎり、婚姻前の氏に戻るのが原則です(民法767条1項)。
しかし、子どもについては、親権者と同じ氏に自動的に変更するというような法律上の規定はありません。
したがって、離婚後も、子どもは父親の氏のままになります。
また、戸籍も、父親の戸籍に入ったままとなります。
そこで、子どもを、母親の戸籍に入籍しようとする場合、家庭裁判所に対し、子の氏の変更の許可の審判申立を行う必要があります(民法791条1項)。
なお、子の年齢が15歳未満の時は、法定代理人である母親が審判申立を行いますが、子が15歳以上である場合は、子自身が行う必要があります。
申立する家庭裁判所は、子の住所地を管轄する裁判所になります。
そして、家庭裁判所で、子の氏を変更の許可を得た後に、市区町村に対して入籍届をします。
親権者が離婚後も婚姻中の氏を使い続ける場合
意外ですが、親権者になった母親が、婚姻前の氏に戻さないで、婚姻後の氏を使用し続ける場合でも、子を親権者の戸籍に入籍させるには、子の氏の変更の許可を得る必要があります。
例えば、婚氏が「田中」の場合、離婚後も旧姓に戻さずに「田中」を使い続けた場合、法律上は、婚姻中の「田中」と離婚後の「田中」は違う「田中」という解釈なのです。
ですので、母親の「田中」と子どもの「田中」は、呼称は同じでも、別の「田中」と考えるので、 子を親権者の戸籍に入籍させるには、子の氏の変更の許可の審判申立をする必要があるのです。
根拠条文:民法767条(離婚による復氏等)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
民法791条(子の氏の変更)
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4 前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
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