「証拠はあるのか」「証拠を出せ」など、どこかでよく聞くセリフですね。
みなさん、証拠という言葉自体よく知っているし、人によっては、日常的にもよく使っているのでは?
そして、証拠は、裁判においても非常に重要なものであることも、みなさんもよくご存じかと思います。
そこで、今回は、裁判における証拠の重要性について少しだけ深堀してみます。
裁判における証拠の役割
証拠は、裁判の勝敗を決める重要なものです。証拠が全くないと裁判には勝てません。
裁判所は、証拠によってある事実があったか、なかったかを判断します。これを事実認定と言います。裁判で重要な事実(正確に言うと、「要証事実」といいます)があったかどうか真偽不明だと、被告がその事実の存在を認めている場合を除いて、原告の請求は認められず、裁判では勝てません。
例えば、貸金100万円の返済がなく、原告が、被告に対し貸金の返済を求める裁判を起こしたとします。この場合、①100万円を貸した事実と②100万円を返還する約束をした事実の2つを原告は証明しなくてはなりません。
①、②の事実を証明するために必要なのが証拠であり、契約書や覚書があれば、それが決定的な証拠になります。契約書や覚書を作っていない場合、もしくは紛失してしまった場合、借りた相手が「借りた覚えはない。」ととぼけてしまうと、原告は、「いや、確かに100万円貸した。被告は、嘘ついている」と言っても、裁判官は、どちらの言い分が本当か判断がつかないと、原告の言い分は通らないのです。
証拠の種類
証拠には、契約書や領収書、診断書などの書証(しょしょう)、検証物などの物証(ぶっしょう)と、当事者の供述や証人の証言、鑑定人の意見などの人証(じんしょう)などがあります。
証拠力
証拠によって、裁判所の事実認定に与える力が異なります。
事実認定に対する影響力のことを、証拠力(しょうこりょく)と言います。証明力、証拠価値とも言ったりもしますが、同じ意味です。
例えば、裁判の当事者は、一般的に自分に有利な主張をしがちです。なぜなら、自分に不利益な事実を主張すれば、裁判に負けてしますから。その意味で、当事者の供述は、割り引いて考える必要があるのは理解できるかと思います。
他方、交通事故をたまたま目撃した人は、どちらが裁判に勝とうが自分の利益とは基本的には無関係ですので、中立な発言が期待できます。その意味で目撃者の証言は、一般的にみて信用性が高いといえます。
また、契約の存在や内容が争いになっている事件において、当事者の署名押印がある契約書の存在は、契約の事実を認定するのに極めて重要な価値をもちます。
当事者の一方が、証言台に立って契約書の内容と違うことをいくら力説してみても、その供述は、契約書に比べると、証拠力は弱いと言わざるを得ません。
このように、証拠は裁判において、勝敗を左右する重要なものであり、証拠の種類によって、証拠力には差があるのです。そして、当事者の証言も証拠にはなりますが、契約書や領収書などの書証に比べると証拠力は弱いものとならざるを得ません。
裁判の勝敗に対する証拠の影響力
裁判は、依頼した弁護士の力量によって勝敗が決まると思っている人も多いかもしれません。
そう考える人は、有能な弁護士と評判のある人を血眼で探し回るかもしれません。
しかし、実際の裁判は、自分に有利な証拠がある方が、勝つ場合が殆どです。
もちろん、複雑な事件の場合、弁護士の力量によって、証拠の見極め方、主張の仕方に差はでます。
しかし、一般的な事件の場合、弁護士がそれほど的を射た主張をしていなくても、自分に有利な証拠があれば案外裁判は負けないのです(私見)。
※今回の証拠に関する記事は、非常にざっくり説明しています。ここは、司法試験、司法修習などで詳しく掘り下げて勉強する、すごく重要な分野です。丁寧に説明すると、本1冊分位必要になります。
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