多くの人は、一度も裁判をすることなく、人生を全うしています。
多くの人の裁判に対するイメージは、テレビや小説で見聞きしたものになるかと思います。
この点、テレビドラマに出てくる裁判の場面のほとんどは、刑事裁判の被告人や証人が証言台で証言している場面です。
民事裁判の様子を詳しく描いているテレビ番組や小説は、めったにありません。
そうだとすると、民事裁判についてイメージも出来ない人が大半ではないでしょうか?
そこで、今回は、多くの人に馴染みの薄い民事裁判の裁判所で行われていることについて、説明します。
1 訴訟提起から第1回口頭弁論期日まで
民事裁判を始めるには、まず訴状と証拠を書面で、裁判所に提出します。
それからおおよそ1~2か月後に、第1回目の裁判の日が決まります。
第1回目の裁判は、公開の法廷(こうかいのほうてい)で行われます。裁判を公開しているので、後ろにある傍聴席(ぼうちょうせき)で誰でも自由に裁判の様子を見学することが出来ます。
1回目の裁判で原告側の行うこと
1 訴状の陳述
1回目の裁判は、原告は、既に提出してある訴状を陳述(ちんじゅつ)します。
陳述といっても、訴状の内容を実際に読み上げるのではなく、裁判官から「原告(代理人)は、訴状を陳述しますね?」と尋ねられ、これに対し原告は「はい、陳述します。」等と答えます。
2 証拠の取調べ
それから、すでに訴状と一緒に提出してある証拠を取り調べます。
証拠を取調べるといっても、1つ1つ内容を確認するのではなく、裁判官から「原告は、証拠甲1号から5号証まで提出されているので、これを取り調べます。」と言われ、原告は「はい。」とだけ答えます。これで証拠の取調べは終了です。
なお、原本がある場合には、原本の取調べを行います。
証拠の提出・取調べ方法などについては、別記事で詳しく説明します。
1回目の裁判で被告側の行うこと
1 答弁書の陳述
次に、被告が答弁書(とうべんしょ)を陳述します。原告の訴状の場合と同様、裁判官から「被告(代理人)は答弁書を陳述しますね。」と尋ねられ、これに対し、被告は「はい、陳述します。」等と答えます。
答弁書とは、訴状に書かれている、原告の請求や事実関係に対する、認否や反論をする書面です。原告の請求をすべて認める場合は裁判はすぐに終了します。しかし、基本的には、原告の請求を争うので、「原告の請求を棄却する」と記載します。
第1回目の裁判の日は、基本、原告側の日程調整だけで決まります。
そのため、被告側は、原告の主張に対し、具体的な反論の準備が間に合わないことが多いです。
そこで、答弁書では、原告の主張に対し具体的な主張・反論はせずに、原告の請求の棄却(ききゃく)を求め、「具体的な主張は次回期日に行う。」と主張することが一般的になっています。
2 証拠の取調べ
また、被告も証拠を提出している場合は、原告と同様に、証拠の取調べを行います。
しかし、1回目の裁判では、準備が間に合わないことが多く、被告側が証拠を提出することは実務上そう多くはありません。
なお、被告(代理人)は、1回目の裁判の日時は、他の予定で埋まっていることもあり、裁判には出席せず、答弁書を提出するだけの場合もあります。これを「陳述擬制」(ちんじゅつぎせい)と言います。第1回目の裁判だけに認められています(民事訴訟法158条)。
その後、裁判官と当事者で今後の進行予定などについて協議をしてから、次回の裁判の日程を決めます。
以上で、第1回目の裁判のやることは終了です。
スムーズに進めば、おおよそ5~10分程度で終わります。
このように、民事裁判では、すでに提出してある書面の確認をすることがメインですので、せっかく裁判を傍聴しても、当事者がどういう主張をしているのか、どういう争いがあるのか全く知ることが出来ません。
ですので、刑事裁判とは異なり、民事裁判を傍聴に来る人はほとんどいません。
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